1. 業種別特徴:自動車関係、化学、電気・電子等の製造業が中心
●事業所数の業種別内訳は、製造業が全体の64.5%(726事業所)を占めており、製造業のウェイトが高くなっています。製造業の他には、商業が12.2%(137事業所)、運輸・倉庫業が7.6%(85事業所)を占めています。製造業の内訳では、自動車・同部品が167事業所、化学品が121事業所、電気・電子が119事業所であり、製造業全体の56.1%を占めています。
●従業員数の業種別内訳は、製造業が全体の90.5%(86,250人)を占め、次いで商業が3.4%(3,190人)を占めています。製造業の内訳では、自動車・同部品だけで全体の52.33%を占め、49,820人の雇用を創出しています。次いで、電気・電子(6.9%、6,600人)、その他機械(6.3%、5,950人)と続いています。
●製造業のうち、「実際に製造活動を行っている事業所(いわゆる工場)」の割合は、全事業所数の27.2%(306事業所)、全従業員数の56.2%を占め、53,550人の雇用を創出しています。日本企業にとって、中西部地域は米国内の重要な生産拠点として機能していることが分かります。
2.地域別特徴:都市部にとどまらず、広範な地域で活発な事業活動
●事業所数及び従業員数の州別分布をみると、米国第3の都市であるシカゴを擁するイリノイ州に事業所・雇用が集中しており、製造業が集積しているのは勿論のこと、商業、運輸、サービス業といった第3次産業の事業所・雇用が他州に比べ集中しているのが分かります。
●インディアナ州では、自動車・同部品関連の事業所が集中していますが、従業員数の分布ではその集中度合いがさらに顕著であり、日系自動車産業が同州にもたらす雇用効果が如何に大きいかが分かります。
●アイオワ州、ミネソタ州、ミズーリ州及びネブラスカ州においても、自動車・同部品製造業における従業員数が多く、アイオワ州ではタイヤ・ゴム製造業の従業員も多いことが分かります。
●事業所の立地を州別にみると、カンザス州、ミネソタ州、ミズーリ州及びウィスコンシン州では、カンザス・シティ、ミネアポリス、セント・ルイス、ミルウォーキー及びマディソンといった都市部に集中している一方、イリノイ州、インディアナ州では州内の各地域に分散しています。
●また、製造業を中心に、従業員総数1,000人を超える大規模事業所の多くが各州の都市部以外の地域に立地している中で、特に、インディアナ、イリノイの一部ではインターステート(州間高速道路)に沿った事業所の団地化がみられます。これは、製造業を中心とした日系企業は米国進出にあたり、「交通の利便性」を重視している結果が反映されたものと思われます。
3.過去5年間の特徴(イリノイ、インディアナ、ミネソタ、ウィスコンシン)
●事業所数は、過去5年連続して減少しています(2000年→2005年:15.3%減)。他方、業種別傾向では、自動車・同部品製造業及びタイヤ・ゴム製造業が事業所数を維持しているのに対し、建設業(55.6%減)、金融・保険・不動産業(44.9%減)及び金属・鉄鋼業(31.6%減)では減少傾向が顕著なものとなっています。
●また、2001年以降減少していた従業員数は、2004年に増加に転じ、2年連続の増加となっています。業種別にみると、医薬品製造業(29.2%増)及び自動車・同部品製造業(8.0%増)が増加傾向にある一方で、金融・保険・不動産業(77.2%減)、金属・鉄鋼業(76.8%減)、建設業(64.7%減)、タイヤ・ゴム製造業(51.7%減)及び商業(50.7%減)は減少傾向が顕著なものとなっています。
●近年の日系事業所の動向からみた日本からの進出状況の特徴として、金融・保険・不動産及び金属・鉄鋼等のウェイトが低下する一方、自動車・同部品及び医薬品製造業の位置付けが相対的に高まりつつあることが指摘できます。
●なお、現地採用従業員数の動向をみると、2001年から3年連続して減少していましたが、2004年以降、2年連続で増加しており、日系事業所が中西部での雇用を生み出す上で大きな役割を果たしていることが伺われます。
4.中西部の魅力と日系事業所の役割
●中西部は、労働力、原料・部品等の資源が調達しやすく、かつ、製品の輸送にも便利な環境が形成されており、日本企業の活動拠点として魅力的な条件を備えた地域といえます。
●他方、日本からの直接投資を通じた日系事業所の活動は、?@地元就労の限られた地域を含む雇用機会の提供、?A米国企業に対する派生需要の創出、?B日本から米国に対する技術移転の促進、?C州政府等に対する歳入財源の提供等を通じて、米国地域経済の発展に大きく貢献していることが窺がえます。